こんにちは。
飯田橋のカウンセリングルーム、サードプレイスのナカヤマミチです。
セッションの中で、
「トラウマとPTSDってどうちがうんですか」
という質問を受けることがあります。
たしかにちょっとわかりにくいのです。
トラウマ(心的外傷)、は心に大きな衝撃を与える出来事です。
PTSDはその結果生じる症状群です。
なので、トラウマを受けてPTSDになれば、トラウマ=PTSDといえるのですが、
でも、ここで問題をややこしくしているのが、
●トラウマを受けてもPTSDにならない人もいるし、
●トラウマではない出来事(そう判断しているのは治療者であって、ひいては診断マニュアルなのですが)でもPTSDの症状が出る人がいる、ということです。
診断マニュアル(米国精神医学会診断統計マニュアル第5版、DSM-5と呼ばれています)は、トラウマ的出来事について「実際にまたは危うく死ぬ、深刻な怪我を負う、性的な暴力などの」出来事、と定義しています。
それは例えば、災害や、暴力、深刻な性被害、または重篤な交通事故、戦闘体験、虐待、災害や虐待の悲惨な現場を何度も何度も目のあたりにすること、などです。
これらのトラウマを受けてPTSDの症状に悩んでいないのなら、それは問題ありません。
これらのトラウマを受けてPTSDの症状が出たとすると、立派な(?)PTSDの患者です(でもだからといって適切な治療がきちんと受けられるかは別の問題なのが悩ましいこところです)。
では診断マニュアルで示されているもの以外の心に大きく衝撃を与える出来事はトラウマではないのでしょうか。
臨床的にはそうではない、それらはトラウマであると考えられています(臨床的には、というのは治療の場では、という意味で、残念ながら裁判など法律の方面などではまだまだ認識に壁があるようです)。
例えば、学校時代のいじめや職場でのパワハラ、モラハラ、(身体的暴力以外の)ドメスティックバイオレンスなどは心に大きな衝撃を与え、その後もしばしば感情面や認知(考え方)に大きな影響を与える出来事だといえるでしょう。
このようなトラウマ的出来事は私たちにPTSD症状などをはじめ様々な影響を与えることは知られています。
セクハラが初めて人権侵害と米国の最高裁で認められたのは1986年(Vinson対Meritor Savings Band訴訟)のことでした。またドメスティックバイオレンスの問題が新聞などでクローズアップされ、法整備がすすみ始めたのはここ20年程度のことです。
そのように考えると、まだ社会的に認知されていない、名前が付けられていないトラウマ的出来事はたくさんあるのではないでしょうか。
これらのトラウマ的出来事の影響から私たちはどのように回復していけるのか、それは次回以降に。
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ではまた。
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